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そもそもマネージャー以外にもメイクさんやスタイリストさん、カメラマンさんなどメンバーの間近で仕事をする女性スタッフなんて驚くほどたくさんいるワケで。
いちいちファンの──平たく言えば部外者の心情を汲んで女人禁制を貫くことなど無理だし、そっちの方がよっぽどあり得ない。
というか、真剣に仕事をする相手に対して失礼である。

一つの現場で多い時には何十人とスタッフが動き回るなか、誰がマネージャーなのかを外見で判断をすることはほぼ不可能だし、記憶の限りでは一度としてファンの人に「マネージャーですか」などと聞かれたことはなかったはずなのだが…

それでも私の存在が認知されているというのだから、ファンのリサーチ力というか情報網は侮れないもんだな。
なんて、その当時は特に不安に思うこともなく、むしろ感心すらしていた気がする。


それどころか、
「ヒール履いたら俺たちに引けを取らなくなるくらいデカくなるとことか、黙ってたら新人マネージャーに見えない威圧感とか雰囲気とか、姉さんのそういうとこが一部の人間に刺さってるって噂らしいよ」

と、ケータイをいじりながらニヤつくSNS警察の渡辺さんに聞かされ、私は思わず「んなアホな」と鼻で笑っていたくらいだ。

都市伝説化した私が「謎の美人マネージャー」だなんて誇張され過ぎた呼ばれ方をされ、なかにはこっそりファンもいるというにわかには信じがたい噂まで教えてくれたのは、同じくSNS警察の佐久間さんである。
その話を聞いても、やっぱり私は半笑い程度の反応しかできなかった。

いずれにせよ脅威だとは思わなかった。
それよりもマネージャーの分際で推しが付くという、なんとも奇妙な事態に複雑な気分になったのを覚えている。



だとしても、だ。
己のことながら、そんな話があった事すらすっかり忘れていたというのに、急に、そんな。
色々とタイミングが悪すぎる。

「ファンなんです…」

蚊の鳴くような彼女の声にハッとなり、一気に引き戻される。
呆けてしまった顔を慌てて引き締めたが、間抜けな顔を晒したあとで、それが果たして意味があるのかは分からない。
差し出された紙袋が、彼女の緊張を伝えるように小刻みに揺れていた。

マネージャーのファンの対処法なんて、誰からも教えてもらってない。
そうまでして渡そうとする理由が分からない。
唇を噛み締める。

勘弁してくれ。

いつまでも立ち尽くしたまま受け取らない私が、人でなしのようにすら思えてきた。

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作者名:泥濘 | 作成日時:2024年3月6日 17時

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